気象と統計力学(R4)

R4 新しいボルツマン定数の設定

 

7. 新しいボルツマン定数の設定

分子論的な水蒸気圧が決まると、kεを計算することができる。

大気中に地面と平行な厚みは1mの同心円を考える。外周の長さを2Lεとすれば、円の平均的な長さはLεである。Vを体積とすれば、
$V=\displaystyle\frac{L_{\varepsilon}^2}{\pi}$
12)式の気体の状態方程式を用いると、
$P\displaystyle\frac{L_{\varepsilon}^2}{\pi}=Nk_{\varepsilon}\lambda$        18)

年間平均降水量Qを1824 kg、アボガドロ数Abを6.022*10^23、水分子の分子量MH2Oを18.02 g/molとすれば、水分子の質量mと粒子数Nは、
$m=\displaystyle\frac{M_A}{A_b}=2.9916*10^{-26}$ kg
$N=\displaystyle\frac{Q}{m}=6.096*10^{28}$
Lεを求めればkεが求まるから、14)式と18)式より、
$\Gamma_1=\sqrt{\displaystyle\frac{mL_{\varepsilon}^2}{2h^2}\displaystyle\frac{PL_{\varepsilon}^2}{N}}}$
11)式と17)式より、
$L_{\varepsilon}=\sqrt{\displaystyle\frac{N}{e^{C_R/1.622}\sqrt{\displaystyle\frac{mP}{2h^2N}}}}$
=60.19*1.1974、P=1840pa、h=6.626*10^-34Jsとすると、
$L_{\varepsilon}=9.791$

18)式より、λ=60.60kg、とすると、
$k_{\varepsilon}=1.520*10^{-26}$ J/kg 

3)式と4)式より、g=9.807m/s^2とすると、
$k_x=15.304$ J/kg
$L_x=3.1394$

Lxはπとおいてよいことがわかる。


8. 雨粒の平均落下速度と風の平均速度

Lx=πが求まると、2)式の新しい力学系の運動方程式より、雨粒の平均落下速度と、風の平均速度が得られる。
$xk_x=\displaystyle\frac{1}{2}xv^2$         19)
$k_x=\displaystyle\frac{g\pi}{2}$

新しい力学系では、E1を降水のエネルギー、E2を大気のエネルギーとすると、
$E_{mix}=E_1+E_2$
$E_1=\displaystyle\frac{E_{mix}}{S_R}$
より、
$E_2=(S_R-1)E_1$
降水と大気の一雨の降水量xを同じとすると、19)式より、
$v_1^2=\pi g$
$v_2^2=(S_R-1)v_1^2$
$v_{mix}^2=v_1^2 S_R&
SR=1.622、g=9.807(m/s^2)とすると、
$v_1=5.5506$ m/s
$v_2=4.3776$ m/s
$v_{mix}=7.069$ m/s

ほぼ現実的な雨粒の落下速度v1と、風速v2を得ることができる。

kεを用いると、m1を水分子の質量、v1を水分子、雨粒の落下速度、kεを新しいボルツマン定数、λを新しい温度、平均降水量のパラメータとすると、
$\displaystyle\frac{1}{2}m_1 v_1^2=k_{\varepsilon}\displaystyle\frac{\lambda}{2}$
より、
$v_1=\sqrt{\displaystyle\frac{k_{\varepsilon}\lambda}{m_1}}$
従って、v1=5.549(m/s)となってv1と一致する。

m2を乾燥空気の質量とすれば、
$\displaystyle\frac{m_1}{m_2}=0.622$
より、v2=4.376(m/s)となってv2と一致する。


9. 統計力学系による検証

温度(16.19℃、289.34K)と水蒸気圧(1840pa)が決まると、統計力学系でS=2を検証することができる。新しい力学系と統計力学系を比較するために、自由度1の水分子の併進運動とした。諸元は次のとおりである。
      T=289.34 K 
P=1840 pa                
      λ=60.60 kg
CR=60.19*1.1974
    N=6.096*10^28
      m=2.9916*10^-26 kg
      h=6.626*10^-34 Js
      kb=1.3806*10^-23 J/K

計算式とその結果は次のとおりである。
$L_{\varepsilon}^2=\displaystyle\frac{\pi}{P}Nk_b T$=4.158*10^5 m^2
     $\Gamma_1=\displaystyle\frac{L_{\varepsilon}^2}{h}\sqrt{\displaystyle\frac{mP}{2N}}$=1.3334*10^13
$\alpha=\ln\displaystyle\frac{N}{\Gamma_1}$=36.06
$S_R=\displaystyle\frac{C_R}{\alpha}$=1.999
$v_1=\sqrt{\displaystyle\frac{k_b T}{m}}$=365.4 m/s

古典力学系で確認したS=2が、10)式が成立しているとすると、統計力学系でも確認できる。

新しい力学系と、統計力学系を比較して、表2.に示した。
              表2. 力学系の比較
           新しい力学系    統計力学系
  Lε(m)     9.791            644.6
Kε(J/kg),Kb(J/K) 1.520*10^-26   1.3806*10^-23
       α          44.434             36.06
   S         1.622              1.999
   v1(m/s)      5.5506           365.4

新しい力学系は降水現象を取り扱い、統計力学系は熱現象を取り扱っているが、新しい力学系は統計力学系に比較して、格段に小さい力学系であることが分かる。

それぞれの力学系の水分子1個の平均エネルギーは次のとおりである。
  統計力学系   $\displaystyle\frac{\beta}{2}=\displaystyle\frac{k_b T}{2}$=1.997*10^-21 J
  新しい力学系  $\displaystyle\frac{\tau}{2}=\displaystyle\frac{k_{\varepsilon}\lambda}{2}$=4.6056*10^-25 J

降水現象は熱現象に比べて、極めてエネルギーの小さい領域の現象であり、誤差の範囲の現象であることが分かる。新しい温度λと新しいボルツマン定数kεという尺度を設定することによって、エネルギーの極めて小さい領域の、誤差の範囲の降水現象を見ることができるようになる。
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