気象と統計力学(S4)

S4 降水量分布f(x)の数式化

1. 目 的

降水は量子効果を持つ。従って、降水量分布は量子統計となる。この自明な命題を検証した。

2. はじめに

先ず降水量分布を量子統計だけで表してみる。12ミリ以上の観測される降水量分布は、自由度1のボーズ・アインシュタイン統計と一致する。12ミリ以下の降水量分布はその量子統計から、平均降水量の大きい方へずれる。これは全ての観測される降水量分布に見られる。
その理由として、降水現象は、量子統計だけではなく、古典統計、自由度1のボルツマン分布である、が共存するためだと考えられる。古典統計は、自由度1、SR=1.652の量子統計と一致する。平均降水量はボーズ・アインシュタイン分布の平均降水量をλ/2とすれば1.652^2λ/2である。古典統計とボーズ・アインシュタイン分布が共存すれば、降水量xの小さい所では、古典統計の平均降水量より、もっと平均降水量が大きくなるはずである。

実際、観測される降水量分布は4ミリ以下では平均降水量が2^2λ/2の量子統計に近い。従って、本論では、降水量分布は、降水量xが12ミリ以下では、平均降水量が2^2λ/2の量子統計から、平均降水量がλ/2の量子統計、すなわち、自由度1、SR=1のボーズ・アインシュタイン分布へ移行していると考えて、量子統計だけで、観測される降水量分布を導く。

まず、自由度1の量子統計、ボーズ・アインシュタイン分布をSRを使って一般化しよう。導き方は、本論前編参考。xは一雨の降水量、λは新しい温度、平均降水量<x>のパラメータ、である。
$f(x)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\pi}\sqrt{S_R^2 \lambda}}x^{-1/2}\displaystyle\frac{1}{e^{x/S_R^2\lambda+0.4789}-1}$
SRは、降水のエネルギーをE1、大氣のエネルギーをE2とすれば次の定義である。
$S_R=\displaystyle\frac{E_1+E_2}{E_1}$
SR=2の時、E1=E2、SR=1の時、E2=0である。SR=2の時は古典力学系を表す。SR=1の時は自由度1のボーズアインシュタイン統計である。SRは定義から明らかなように、物理的に意味のある範囲は1以上2以下である。SR=1.652が新しい力学系の平均であり、自由度1のボルツマン統計と一致する。古典力学系は、降水と大気のエネルギーが等しいが、新しい力学系は、降水と大気のエネルギーの間に比を持つ。

3. SRの変化による降水量<x>と降水回数Cと年間降水量Qの設定

SRが、1、1.652、2、について平均降水量<x>、年間降水回数C、年間降水量Qを示す。
表4. SRの変化と<x>、C、Q
         SR   1     1.652      2
         <x> λ/2 1.652^2λ/2 2^2λ/2
          C C 1.652C 2C
          Q λ/2C 1.652^3λ/2 2^3λ/2

導き方は以下のとおりである。

f(x)において平均値を変える。
$\beta/2\Rightarrow S_R^2\betaβ/2$
$E=S_R^2\beta/2N$として、
$S_R=\displaystyle\frac{E_1+E?2}{E_1}$
$S_R=\displaystyle\frac{N_1+N_2}{N_1}$
従って、SRの定義は変わらない。

しかし、Eは変わってくる。
f(x)の数式化のためにはSR=1以外を考える。
$N_{mix}=S_R N_1$
$E_{mix}=S_R N_1*S_R^2 \beta/2$
SRが1から2になるとNmixは2倍だが、系のEmixは8倍になる。

Qの場合、SRを変えるとQmixは、β=kελとおいて、
$E=S_R^2 Nk_{\varepsilon}\lambda/2$
これをSRの次の定義に代入する。
$S_R=\displaystyle\frac{E_1+E_2}{E_1}$
Nkε=Ckxより、
$S_R=\displaystyle\frac{S_R^2 Ck_{x_1}\lambda/2+S_R^2Ck{x_2}\lambda/2}{S_R^2 Ck{x_1}\lambda/2}$
従って、$Q_1=C\lambda/2$より、
$S_R= \displaystyle\frac{S_R^2 Q_1(k_{x_1}+k_{x_2})}{S_R^2 Q_1 k_{x_1}}$
$S_R=(k_{x_1}+k_{x_2})/k_{x_1}$より、
$S_R=\displaystyle\frac{Q_{mix}}{S_R^2 Q_1}=\displaystyle\frac{S_R^3 Q_1}{S_R^2Q_1}$
QmixはSRが1から2となると8倍になり、λ/2は4倍に、Cは2倍になる。

ここで、
$Q_2=Q_1\displaystyle\frac{k_{x_2}}{k_{x_1}}$
である。

LεがSRLεとなってもLxは変わらない。
$k_{\varepsilon}=k_x C/N$
$k_x=gL_{x_2}$
において、CがSR倍になってもNもSR倍になり、また、kεとgは定数だから、kxも粒子の種類による定数になる。

上式の両辺に、λ/2をかけると、
$E=k_x Q$
EがSR^3倍になると、QもSR^3倍となる。


4. f(x)の数式化

f(x)を数式化するために、P(x)を導入しよう。P(x)は次の形を持つ。
$P(x)=SR-1$
これはSRの次の定義による。E1は降水のエネルギー、E2は大気のエネルギーである。
$S_R=\displaystyle\frac{E_1+E_2}{E_1}$
変形すると、
$\displaystyle\frac{E_2}{E_1}=S_R-1$
P(x)が1から0へ変化すると、SRは2から1へ変化する。上式では、E2が、E1=E2からE2=0へ変化することとなる。量子統計では、f(x)2がf(x)1へ変化することである。f(x)の添え字はSRである。

降水は量子効果を持つ。従って、観測された降水量分布は量子統計である、と考えて、2つの量子統計、f(x)1とf(x)2で表すと、観測された降水量分布f(x)は次式となり、f(x)は降水量xの増加により、f(x)2からf(x)1へ変化していくと考えている。P(x)=0以下の降水量xではf(x)はf(x)1となる。
$f(x)=f(x)_1-P(x)(f(x)_1-f(x)_2)$

P(x)はエネルギーEの比、だから、P(x)は年間降水量Qの比で表すことができる。
SR=2は古典力学系である。SR=1.652は新しい力学系の平均である。SR=1は新しい力学系の降水を表している。観測される降水量分布は古典力学系だけでは扱えないと考えている。

P(x)を設定しよう。
$S_R C\int_x^\infty f(x)_{S_R}dx=C_{x S_R}$
$\displaystyle\frac{\int_x^\infty xf(x)_{S_R}dx}{\int_x^\infty f(x)_{S_R}dx}=\langle x\rangle_{xS_R}$
において、両式より、
$\displaystyle\frac{\int_x^\infty xf(x)_{S_R}dx}{\displaystyle\frac{C_{xS_R}}{S_R C}}=\langle x\rangle_{xS_R}$
従って、
$S_R C\int_x^\infty xf(x)_{S_R}dx=C_{xS_R}\langle x\rangle_{xS_R}$
と変形して、右辺は、$Q_{xS_R}$だから、
$S_R C\int_x^\infty xf(x)_{S_R}dx=Q_{xS_R}$
SRはxによって変化するから、Qx1とQx2は次の通りとなる。
$Q_{x_1}=S_{Rx_1}\int_x^\infty xf(x)_1 dx$
$Q_{x_2}=S_{Rx_2}\int_x^\infty xf(x)_2 dx$
従って、P(x)は、
$P(x)=\displaystyle\frac{Q_2}{Q_1}2\displaystyle\frac{Q_{x_1}}{Q_{x_2}}-1$
P(x)の変数部をf(x)1とf(x)2で表すと、
$2\displaystyle\frac{Q_{x_1}}{Q_{x_2}}=\displaystyle\frac{\int_x^\infty f(x)_1 dx\int_x^\infty xf(x)_1 dx}{\int_x^\infty f(x)_2 dx\int_x^\infty xf(x)_2 dx}$
である。ここで年間降水量Qと量子統計f(x)の添え字はSRであり、降水と大氣ではないことに注意しよう。

次の一般化された量子統計f(x)を、
$f(x)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\pi}}\displaystyle\frac{1}{\sqrt{S_R^2\lambda}}x^{-1/2}\displaystyle\frac{1}{e^{x/S_R^2\lambda+0.4789}-1}$
t^2=x/SR^2λとおいて、
$f(t)=\displaystyle\frac{2}{\sqrt{\pi}}\displaystyle\frac{1}{e^{t^2+0.4789}-1}$

次の降水量xF(x)を、
$xf(x)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\pi}}x^{1/2}\displaystyle\frac{1}{e^{x/S_R^2\lambda+0.4789}-1}$
t^2=x/SR^2λとおいて、
$t^2 S_R^2\lambda f(t)=\displaystyle\frac{2}{\sqrt{\pi}}\displaystyle\frac{S_R^2\lambda t^2}{e^{t^2+0.4789}-1}$

SRは、上式を変形して、次のとおりとなる。
$\textcircled{1}  \displaystyle\frac{\sqrt{\pi}}{2}\int_x^\infty f(x)_1 dx=\int_x^\infty \displaystyle\frac{dt}{e^{t^2+0.4789}-1}$
$\textcircled{2}  \displaystyle\frac{\sqrt{\pi}}{2\lambda}\int_x^\infty xf(x)_1=\int_x^\infty \displaystyle\frac{t^2 dt}{e^{t^2+0.4789}-1}$
$\textcircled{3}  \displaystyle\frac{\sqrt{\pi}}{2}\int_x^\infty f(x)_2 dx=\int_x^\infty \displaystyle\frac{dt}{e^{t^2+0.4789}-1}$
$\textcircled{4}\displaystyle\frac{\sqrt{\pi}}{2\lambda}\int_x^\infty xf(x)_2 dx=\int_x^\infty \displaystyle\frac{4t^2 dt}{e^{t^2+0.4789}-1}$
$S_R=8*\displaystyle\frac{\textcircled{1}\textcircled{2}}{\textcircled{3}\textcircled{4}}$

λ=60.60とおいて計算した降水量xとSRの関係を、図3.に示した。SRはxに対して減少していくことが分る。



SR=1付近の降水量xを表5.に示した。

表5. SR=1付近の降水量x
         x 15.43 15.44 15.45
         ① 0.37947 0.37931 0.37916
         ② 0.32067 0.32063 0.32059
         ③ 0.67164 0.67153 0.67142
         ④ 1.4487 1.4487 1.4487
         SR 1.0005 1.0001 0.999746

観測される日平均降水量は、15.19 mmである。水蒸気を考慮すると、
15.19*101325/(101325-1840)=15.47
理論値=15.44と観測値=15.47がよく一致している。平均値以下で降水量分布は自由度1の量子統計から大きい方へずれる。そのずれ始める点は、日平均降水量である、と考えられる。これは、日降水量分布を扱った、次の論文、Q-V曲線論でもう一度確認する。

5. 検 証

表6.と図4.に本論前編で用いた、中国、四国、九州、沖縄も含めた、17か所の県庁所在地の、過去15年間の降水量分布の平均と、SR=1、自由度1、のボーズ・アインシュタイン統計、f(x)1、とSR=2の量子統計、f(x)2、を示した。図4から、降水量xが12ミリ以上では観測される降水量分布f(x)は自由度1、SR=1のボーズ・アインシュタイン統計と一致することが分かる。また、降水量xの小さい範囲では、特に4ミリ以下では、観測される降水量分布f(x)は、SR=2の量子統計f(x)2の付近に在ることが分かる。




図5.に、20ミリ以下の観測される降水量分布f(x)と、量子統計、f(x)1とf(x)2、及び本論の理論値を拡大して示した。観測される降水量分布f(x)と本理論値は良く一致している。4mm以下のの範囲で若干ズレているのは、階級幅を4mmと粗くしたためである。



6 結 論

観測される降水量分布は、一般化された量子統計をしていると考え、SR=1とSR=2の量子統計で扱ってもよい、と考えられる。

 

 

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