気象と統計力学(S5)

S5 Q-V曲線論

1. Q-V曲線の設定

容易に想像つくことだが、降水の日数と大気の日数は、全体では1:2であるが、降水が自由度1、大氣が自由度2の降水量量分布関数であるから、降水量に対しては、傾きが違っている。従って、ある降水量以上の降水と大気ではその比率は1:2とはなっていない。
降水と大気の降水量が同じだから、ある降水量以上を分布関数に対して積分すれその比率は容易に求まる。問題は検証だ。大気の降水量をどうやって計るかで、ある。計れなければ、ある降水量以上の大気の個数が分からない。

いま、いったん降った雨をすべて貯留しよう。それを一定量ずつ毎日放流しよう。放流量をzとする。雨が集中すれば貯留地の水量は増し、晴れが集中すれば貯留池の水量は減っていく。雨の日数と晴れの日数の比、P(z)とする、によって、その貯留量は決定され、ある比率で最大になるだろう。最大の貯留容量をVとする。雨も晴れも集中の度合いには、全体で1:2になるから、上限があり、貯留量Vが最大になる比率P(z)は、放流量zによって決まってくることになる。
降水の降水量分布関数を自由度1のボルツマン分布、大氣の降水量分布関数を自由度2のボルツマン分布、指数分布と一般には呼ばれる、とする。ここで古典統計のボルツマン分布としたのは、量子統計の量子効果を考えないためである。放流量zでは、それ以上の降水は貯留され、また雨の日と晴れの日に放流される。分布関数と置いたから、降水と大気の降水量はランダムに出現し、また、降水と大気の日数の比率P(z)は全体も部分も同じになっていると考えられる。

放流量zを変えていけば、最大貯留量Vも比率P(z)も変わって来るだろう。実際、1年間の降水を時系列に従って、出し入れ計算すると、放流量zと最大貯留容量Vの間に、右下がりのQ-V曲線が得られる。ここで、Qは年間降水量である。このQ-V曲線を大気と降水の分布関数から理論的に求めることができれば、降水と大気の降水量xに対する比率P(z)が求まることになる。降水量xは1m^2に降った降水に対してであるが、放流量zは例えば、1haに降った降水に対してになる。

最大貯留量をV、放流量z以上の貯留量をV1、雨の日の放流量をV2、晴れの日の放流量をV3とすれば、最大貯留量Vは、
$V=V_1-V_2-V_3$
放流量zに対して雨の日に従う分布関数をf(z)1、自由度1のボルツマン分布である、晴れの日の分布関数をf(z)2、自由度2のボルツマン分布である、とする。添え字は自由度である。雨の日数をA1、晴れの日数をA2とし、分布関数の平均をそれぞれδ1/2とδ2とすると、
$V_1=A_1\int_z^\infty zf(z)_1 dz$
$V_2=zA_1\int_z^\infty f(z)_1 dz$
$V_3=zA_2\int_z^\imfty f(z)_2 dz$

$f(z)_1=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\pi}}\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\delta_1}}z^{-1/2}e^{-z/\delta_1}$
$f(z)_2=\displaystyle\frac{1}{\delta_2}e^{-z/\delta_2}$
$\delta_1=2\delta_2$

雨の日の日数A1と晴れの日の日数A2の比をP(z)とおこう。

$P(z)=\displaystyle\frac{A_2}{A_1}$
雨の年間降水量Qを基準としよう。
$Q=\displaystyle\frac{\delta_1}{2}A_1$
$Q=\langle\delta_2\rangle\displaystyle\frac{A_2}{2}$
$\langle\delta_2\rangle=\displaystyle\frac{\int_z^\infty zf(z)_2 dz}{\int_z^\infty f(z)_2 dz}$
従って、
$P(z)=\displaystyle\frac{\delta_1}{\langle\delta_2\rangle}$
これを0から∞まで積分すると2である。

降水量xから放流量zを求めよう。

埋立地B m^2の最終処分場を考えよう。埋立地に降った雨はゴミの中を通って出てくる。浸出水という。今降水量をxとし、月別、地域別の進出係数をqiとすれば、浸出水量zはBを埋め立て地面積とすれば、
$z_i=xq_i B$
これを次の自由度1のボルツマン分布、
$f(x)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\pi}}\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\lambda}}x^{-1/2}e^{-x/\lambda}$
に、代入すると、
$f(zi)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\pi}}\displaystyle\frac{\sqrt{q_i B\lambda}}{\sum q_i B\lambda}}z_i^{-1/2}e^{-z_i/q_i B\lambda}$
平均は、
$\langle z\rangle=\sum \int_0^\infty z_i f(z_i)dz=\displaystyle\frac{1}{2}\displaystyle\frac{\sum(q_i B\lambda)^2}{\sum q_i B\lambda}$
従って、⟨z⟩=δ1/2より、
$f(z)_1=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{\pi}\sqrt{\delta_1}}z^{-1/2}e^{-z/\delta_i}$
$\delta_1=\displaystyle\frac{\sum{q^2_i}}{\sum q_i}B\lambda$
同じように、
$f(z)_2=\displaystyle\frac{1}{\delta_2}e^{-z/\delta_2}$
$\delta_2=\delta_1/2$

検証しよう。。

検証は豪雨地域の、高知県南国市御免観測所の過去15年間について行った。表7.と図6.に過去15年間の日降水量分布の平均値と理論値を示した。
理論値と観測値がよく一致している。日降水量分布は自由度1のボルツマン分布と置いてよいことが分かる。





表7.と図7-1.にQ-V曲線の、1年ごとに時系列に従って出し入れ計算し、15年間の平均値を取ったものと理論値を示した。
理論値と観測値がよく一致している。日降水量分布は、降水は自由度1の、大気は自由度2のボルツマン分布と置いてよいこと、それらの平均降水量は等しいこと、が分かる。





図7-2.と図7-3.に、V1、V2、V3、P(z)を示した。V1、V2、P(z)は緩やかに減少、または増加するが、V3には最大値があることが分かる。そのため、V3の最大値以上では放流量zを増加しても、調整池容量Vはあまり減少しなくなる。また、Q-V曲線の理論値と観測値が、この最大値付近で若干ズレており、理論値が若干小さく計算されていることが分かる。その他、降水量が大きくなれば、雨の日の割合が多くなっていくとが分かる。







2. Q-V曲線のSRと量子効果のSRの関係

Q−V曲線と量子効果のSRの関係を検討する。

量子効果のSRは自由度2であるが、Q-V曲線の自由度は3である。だが、降水と大気のエネルギー、年間降水量の比ではある。

記号の添え字1を降水、2を大気とすれば、

$P(V_x)=\displaystyle\frac{V_{x2}}{V_{x1}}$

これはx以上の年間降水量の比であり、自由度3である。

$S_R=1+\displaystyle\frac{E_2}{E_1}$

SRはエネルギーの比であり、自由度2である。

ここで、SRを次のように変換する。

$P(x)=\displaystyle\frac{Q_1+Q_2}{Q1}\displaystyle\frac{2Q_{x1}}{Q_{x1}+Q_{x2}}-1$

右辺第1項がSRの項である。。

$\displaystyle\frac{Q_{x1}}{Q_{x2}}=\displaystyle\frac{V_{x1}}{V_{x2}}$

より、

$P(x)=\displaystyle\frac{Q_1+Q_2}{Q_1}\displaystyle\frac{2}{1+P(V_x)}−1$

$(Q_1+Q2)/Q_1=2$と置けば、SRは、

$S_R=1+P(V_x)$

Q−V曲線に出てきたP(z)は、

$P(z)=\displaystyle\frac{A_2}{A_1}$

で年間の降水の日数A1と年間の晴れの日数A2の比である。

各パラメータの主要な値は次のとおりである。
      P(V)     2     1     0
      P(x)     1/3    1     3
      SR      3     2     1

P(x)とSRに3が出てくるのは、降水1個、自由度1、と大気2個、自由度2、を考えているからである。自由度1の降水1個と自由度1の大気1個の場合は、上表の、P(V)=2の列が無くなる。

検証してみよう。。

SR、P(z)、P(Vx)、P(x)を図8.に示した。自由度1の降水と自由度2の大気の日降水量x以上の年間降水量Qxから求めたそれぞれのパラメータは、平均日降水量で、P(Vx)とP(x)が交差し、それぞれの値は1である、その時のSRの値は2を示す。日降水量の大きい所では、SRは2以下となり、古典力学系はSR=2だから、新しい力学系の領域にあることが分かる。新しい力学系のSRの平均値は1.652である。また、P(z)とP(Vx)は若干異なることが分かる。

P(V)とP(z)の違いは、⟨x⟩を掛けるか、xを掛けるかの違いである。当然、⟨x⟩を掛けたP(V)の方が小さい。

図8.は自由度1の降水と自由度2の大気の場合であるが、自由度1の降水と自由度1の大気の場合、SRは2から始まって、日降水量の増加とともに減少し、平均日降水量で1になると推測される。12mm以下のf(x)の数式化の際にSRを2から1へ変化させたが、その理論的な根拠づけとなっている、と考えられる。



3. 古典統計のSRと量子統計のSR

量子統計のSRと古典統計のSRは同じなのか、を検討する。SRの定義に、量子統計と古典統計の要請はしていないが、数式で展開してみよう。自由度3と自由度2の場合は直感的に分かるが。。

自由度2の場合。。量子統計。。添え字はSRである。。

$S_R=\displaystyle\frac{Q_2}{Q_1}\displaystyle\frac{2Q_{x1}}{Q_{x2}}$
$\displaystyle\frac{Q_2}{Q_1}=8$

自由度3の場合。。古典統計。。添え字は降水が1、
大氣が2である。。

$S_R=\displaystyle\frac{Q_1+Q_2}{Q1}\displaystyle\frac{2}{1+P(x)}$
$\displaystyle\frac{Q_1+Q_2}{Q_1}=2$

形式は同じであるが、平均降水量が違う。しかし、分母がa倍になれば分子もa倍になって、またSRは無次元だから、日降水量か一雨の降水量かによらない。

従って、古典統計のSRと量子統計のSRは、同じとなる。。


 

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