気象と統計力学(P2)

P2 新しい力学系と新しい温度の設定

  1. 新しい力学系と新しい温度の設定
    
    降水と大気にエネルギーの比を持った力学系を検討してエネルギーと降水量の関係式を導く。この力学系は、降水と大気のエネルギーEが等しいと考えるのではなく、降水と大気の年間降水量Qが等しいと考えている。また、量子効果は降水だけではなく大気にも現れるため、降水の雨粒を、大気中の窒素分子Nや酸素分子Oと同じように、相変化もしない、相互作用もしない、理想気体粒子として取り扱う。
    
    質量mn(㎏)の降水粒子が速度v(m/s)で運動しているとする。mは水分子の質量、nは降水粒子に含まれる水分子の個数である。単位面積で長さをLx(m)とする細長いリング状の箱をC個考える。細長い箱の両端をくっつけてリング状としたのは、1次元1方向の粒子の運動を取り扱いたいためである。粒子の径に比べてリングの長さLxが非常に長いときは1次元1方向の運動と考えてもよい。或いは曲がりの効果を無視してもよいと考えている。1個の箱の中にq個の降水粒子が配置されているとすると、降水継続時間θ(s)内に地上C(m^2)に落下した降水粒子の総数Mは、
                $ S_R =\displaystyle\frac{vθ}{L_x}$
                $ M = qS_R C$
    一雨の降水量x(kg)は、
                $ x=mnqS_R $
    Cを年間降水回数と解釈すれば、
                $ xC = mnM$
    従って、
                 $ x=\displaystyle\frac{v\theta}{L_x}.....1)$
    降水継続時間θによって速度vが変化する場合を考える。速度vが変化する場合は、重力を考えることができる。比例係数をgとおいて、
                 $ v=g\theta$
    従って、降水量xは、1)式より、
               $ x=k_{\theta}v^2$
               $ k_{\theta}=\displaystyle\frac{mnq}{L_x g}.....2) $
    2)式を変形して、
              $ xk_x=\displaystyle\frac{1}{2}m_r  v^2 \label{02}.....3)$
    ただし、
              $ k_x=\displaystyle\frac{L_x g}{2}$
              $ m_r=mnq$
    3)式が現在考えているモデルのエネルギーE1である。mrをxで表して、mr=x/SRとすると、
              x\displaystyle\frac{L_x g}{2}=\displaystyle\frac{x}{2S_R}v^2=E_1.....4)$
    ここで、降水と大気のエネルギーが違うことを考慮して、古典力学系よりエネルギーがE3小さくなったと考える。従って、エネルギーE1は次のとおりとなる。
              $ x\displaystyle\frac{L_x g}{2}=\displaystyle\frac{\frac{1}{2}xv^2 -E_3}{S_R}=E_1$
    上式において、
              $ E_1=\displaystyle\frac{E_1+E_2}{S_R}.....5)$
    とおくと、
              $ E_1+E_2=\displaystyle\frac{1}{2}xv^2 -E_3$
    E1+E2が新しい力学系のエネルギーである。古典力学系1/2xv2よりE3だけエネルギーが小さくなっている。本論では、E1が降水のエネルギー、E2が大気のエネルギーと考えている。E1とE2は等しくないから古典力学系より、エネルギーはE3だけ小さくなる。E1とE2を等しくし、SR=2とすると、4)式と5)式より、古典力学系となる。従って古典力学系では、
              $ xgL_x=\displaystyle\frac{1}{2}xv^2$
    5)式においてE2=0おけばS=1となって、4)式よりE1が得られるから、
              $ xk_x=\displaystyle\frac{1}{2}xv^2.....6)$
              $ k_x=\displaystyle\frac{L_x g}{2}$
    E1は古典力学系の1/2となる。         
    6)式の平均をとって、両辺にCをかけて、Nを年間降水量Qに含まれる水分子の数とすれば、
              $ \langle x \rangle C=mN$
    より、
              $ \langle x \rangle\displaystyle\frac{C}{N}k_x=\displaystyle\frac{1}{2}m<v^2>$
    上式においてkεを一定として、次の条件が成立している時、
              $ Ck_x=Nk_{\varepsilon}$
    ε=1/2mv2より、エネルギーεと降水量xの関係式が導かれ、定式化することができる。
              $ \varepsilon = k_{\varepsilon} x.....7)$
    水分子の平均エネルギー<ε>と一雨の平均降水量<x>は、自由度は1だから、
              $ \langle \varepsilon \rangle =\displaystyle\frac{\tau}{2}.....8)$
              $ \langle x \rangle=\displaystyle\frac{\lambda}{2}.....9)$
    従って、
              $ \tau =k_{\varepsilon} \lambda$
    年間降水量Qは、年間降水回数をCとして、
              $ Q=\displaystyle\frac{\lambda}{2}C.....10)$
    8)式と10)式は9)式から自明に導かれる。9)式の関係は後ほど確認する。
    
    新しい力学系ではkεとλは、統計力学系におけるボルツマン定数kbと温度Tと同じ役割を持っている。新しい力学系では降水量のパラメータλは統計力学系の温度Tと同じ重要な物理量となる。
    
    古典統計力学系のエネルギーβと新しい力学系のエネルギーτの関係を付論で考察し、それらの間の変換係数を決定した。その結果、変換係数は約1/4500であり、新しい力学系のエネルギーは、古典統計力学系では誤差の範囲であり、量子効果の領域のエネルギーであることが分かった。降水現象はβの約1/4500のτによってはじめて見えることとなる。
    微小なエネルギーτは、或いは、新しい力学系は、統計力学とも量子力学とも若干異なった理論体系、系は降水と大気のエネルギーに比を持ち、エネルギーの比が時空を小さくして降水と大気の両方に量子効果が現れ、系には古典統計と量子統計が共存する、を持つことを本論(前編・後編)と付論(前編・後編)で示す。
    
    系のエネルギーEと年間降水量Qの関係を求める。
    年間降水量Qに含まれる水分子の粒子数をNとすると、
              $ Q=mN$
    降水のエネルギーEは、
              $ E=\displaystyle\frac{\tau}{2}N$
    従って、
              $ E=\displaystyle\frac{\tau}{2m}Q$
    降水と大気(晴れ)の平均降水量を等しいとおくと、降水と晴れの年間回数は同じだから、年間降水量Qは10)式によって等しくなるが、構成分子の質量mが異なっているから、比例係数kεを一定とすると、降水と大気のエネルギーEは上式によって異なってくる。
    
    8)式の両辺にNを掛けると系のエネルギEーと年間降水量Qの関係は、τ=kελと10)式から、
              $ E=k_xQ$
              $ k_x=k_{\varepsilon}\displaystyle\frac{N}{C}$
    新しい温度λ、降水量のパラメータと、新しいボルツマン定数kεを設定することによって、系は、(E,τ,N)だけでなく(Q,λ,C)によっても表記できる。Q、λ、Cは観測値として得られるから、Q、λ、Cを用いれば新しい力学系から降水現象を解析することができる。
    
    以下の論考では、降水と大気の間にエネルギーの比が存在すると、降水と大気の継続時間が観測値より短くなって降水と大気の両方に量子効果が現れ、系には古典統計と量子統計が共存することを検証した。