気象と統計力学(P3)

P3 エントロピーと最も確からしい確率

4. エントロピーと確率

系を確率的に考察するために、エントロピーSと降水量のパラメータλを次のように定義する
             $ S=\ln W(Q).......11) $
             $ \displaystyle\frac{\partial S}{\partial Q}=\displaystyle\frac{1}{\lambda}.......12) $
Qは年間降水量であり、W(Q)は、微視的な降水量への一雨の降水の配置の数である。λは一雨の降水量から定まるパラメータである。

いま、降水回数C、体積V、降水量のパラメータλの系をZ個考える。微視状態iで降水量xiの系がzi個あるとし 、 
      微視状態 1 2 3 ・・・
   降水量  x1  x2  x3  ・・・
   系の数  z1  z2  z3  ・・・
次の条件を満たしているものとする。
            $ \sum_i z_i = Z.......13) $
            $ \sum_i z_i x_i = Q.......14) $
ここで、微視状態iと系の数ziは離散的であるが、降水量xiはある程度の幅を持ち、降水量xiはその中心値であると考える

Z個の系をziに分ける仕方の数は
            $ W=\displaystyle\frac{Z!}{z_1!z_2!z_3!\dots} $
Zが十分大きいと、スターリングの近似式、
            $ \ln Z!=Z\ln Z-Z$
を用いて、
            $ \ln W=-\sum_i z_i\ln{\displaystyle\frac{z_i}{Z}}$
ここで、Z個の系全体のエントロピーをSZとすれば、エントロピーの定義から、
            $ S_Z=-Z\sum_i P_i\ln P_i$
ここで、
            $ P_i=\displaystyle\frac{z_i}{Z}$
Piは系が微視状態iにある確率、割合である。

従って、系1個のエントロピーSは、確率を用いて次のようになる。
            $ S=\displaystyle\frac{S_Z}{Z}=-\sum_i P_i\ln P_i.......15)$

5. 最も確からしい確率

最も確からしい確率を求めるために、系のエントロピーが最大になる確立をラグランジュの未定係数法で求める。

満たすべき条件は次のとおりである。
            
13)式から、
            $ \sum_i P_i=1........................16)$
14)式から、
            $ x_i Z=Q_i$
とおいて、
            $ \sum_i P_i Q_i =Q....................17)$
15)式、16)式、17)式から、
            $\ln W=-\sum_i P_i\ln P_i$
            $f_1 =\sum_i P_i -1$
            $f_2 =\sum_i P_i Q_i - Q$
これをPiで微分すると、
            $d\ln W =-\sum_i \displaystyle\frac{\partial\ln W}{\partial P_i}dP_i$
            $df_1 = \sum_i dP_i$
            $df_2 = \sum_i Q_i dP_i$
df1に-α、df2に-βをかけ、dlnWとの和を0とおく。
            $0=d\ln W -\alpha df_1-\beta df_2$
従って、
            $0=\sum_i (-\ln P_i -1-\alpha -\beta Q_i)dP_i$
全ての微視状態を独立とすると、
             $0= - \ln P_i -1 -\alpha -\beta Q_i$P_i = e^{-1-\alpha -\beta Q_i}$     18)
16)式より、
             $e^{-1-\alpha}=\displaystyle\frac{1}{\sum_i e^{-\beta Q_i}}$
18)式より、
             $ P_i =\displaystyle\frac{e^{-\beta Q_i}}{\sum_i e^{-\beta Q_i}}$        19)
19)式が最も確からしい確率、古典統計と呼ぶ、である。
最も確からしい確率、古典統計、は、本論後編で、年間降水量の揺らぎを解析する際に用いる。

分母をΓで表そう。カノニカル分配関数という。ミクロカノニカル分配関数をΓ1で表せば、それらの関係式は次の通りとなる。
             $\Gamma = \displaystyle\frac{\Gamma_1^Z}{N!}$
             $\Gamma_1 = \sum_i e^{-x_i\beta}$
Z=1の時、カノニカル分配関数は、ミクロカノニカル分配関数となるから、$x_i Z=Q_i $より、古典統計は、次の通りとなる。
       $P_i = \displaystyle\frac{e^{-x_i\beta}}{\sum_i e^{-x_i\beta}}$
ミクロカノニカル分配関数を使った古典統計は、量子効果の数値計算の際に用いる。


6. βの設定

16)式と17)式に18)式を代入して、
             $\sum_i \displaystyle\frac{e^{-\beta Q_i}}{e^{1+\alpha}}=1$          20)
             $\sum_i \displaystyle\frac{Q_i e^{-\beta Q_i}}{e^{1+\alpha }} = Q $      21)
15)式に19)式を代入して、
             $S_N =-N \sum_i\displaystyle\frac{e^{-\beta Q_i}}{e^{1+\alpha}}\ln \displaystyle\frac{e^{-\beta Q_i}}{e^{1+\alpha}}$
                $= -N \sum_i \displaystyle\frac{e^{-\beta Q_i}}{e^{1+\alpha}} (-1-\alpha-\beta Q_i)$
20)式、21)式、より、
                 $= N+\alpha N+\beta NQ$$S=1+\alpha+\beta Q$
この式をQで微分すると、
             $ \displaystyle\frac{\partial S}{\partial Q}=\displaystyle\frac{\partial \alpha}{\partial Q}+Q\displaystyle\frac{\partial \beta}{\partial Q}+\beta $    22)
20)式をQで微分すると、
              $ 0=\sum_i(e^{-1-\alpha-\beta Q_i}(-\displaystyle\frac{\partial \alpha}{\partial Q}-Q_i\displaystyle\frac{\partial \beta}{\partial Q})) $
20)式、21)式より、
               $ \displaystyle\frac{\partial \alpha}{\partial Q} +Q\displaystyle\frac{\partial \beta}{\partial Q} =0$
従って、22)式より、
               $\displaystyle\frac{\partial S}{\partial Q} =\beta$
12)式の定義より、
               \beta=\displaystyle\frac{1}{\lambda}$